「WordPressなら自分たちで更新できます」は本当?社内更新で見落としがちなポイント
Webサイトのリニューアル時に、よくあるご要望の一つが「WordPressにして、自分たちで更新できるようにしたい」というものです。
お知らせやブログ、施工事例、採用情報などを社内で更新できれば、制作会社に毎回依頼する手間や費用を減らせます。 そのため、WordPressなどのCMSを導入すること自体は、Webサイトを運用しやすくする有効な方法です。
ただし、WordPressを入れれば自動的に更新が楽になるわけではありません。
WordPressは、管理画面からページや記事を更新できるようにする仕組みです。 しかし、掲載する文章を考えたり、画像を用意したり、内容を確認したりする作業までなくなるわけではありません。
この記事では、「WordPressなら自分たちで更新できる」と考える前に、Webサイトの新規制作・リニューアル時に整理しておきたいポイントを紹介します。
WordPressは「更新作業をなくす仕組み」ではない
WordPressを導入すると、管理画面からお知らせやブログ記事などを投稿できるようになります。 HTMLやCSSを直接編集しなくても、文章を入力したり、画像を追加したりできるため、社内で情報発信をしやすくなります。
しかし、ここで注意したいのは、WordPressがなくしてくれるのは「制作会社に依頼しないと更新できない状態」であって、更新作業そのものではないという点です。
たとえば、お知らせを1件掲載する場合でも、実際には次のような作業が必要です。
- 何を伝えるのか決める
- タイトルを考える
- 本文を書く
- 必要な画像を用意する
- 関連ページへのリンクを設定する
- 内容に誤りがないか確認する
- 公開してよい情報か社内で判断する
管理画面があれば入力はできます。 しかし、入力する内容を用意するのは、基本的には人の作業です。
つまり、WordPressは「更新作業をなくすもの」ではなく、「更新作業を社内で行いやすくするための仕組み」と考える方が現実的です。
社内更新で見落とされがちな作業
「自分たちで更新したい」という要望自体は自然なものです。 ただ、実際に運用を始めると、想定していなかった作業が負担になることがあります。
特に見落とされやすいのは、文章・画像・確認・運用ルールの4つです。
文章を用意する作業
WordPressの管理画面があれば、本文を入力することはできます。 しかし、「何を書くか」「どのように書くか」は別の問題です。
お知らせ一つでも、実際には考えることがあります。
- 誰に向けた情報なのか
- どこまで詳しく説明するのか
- 問い合わせ先を載せるのか
- 関連ページへ誘導するのか
- 古くなったときにどう扱うのか
たとえば、臨時休業のお知らせであれば、休業日だけでなく、問い合わせ対応や再開日、予約済みのお客様への案内が必要になることもあります。 採用情報であれば、募集要項だけでなく、応募方法や選考の流れまで整理した方がよい場合もあります。
「投稿できる状態」と「掲載する文章が用意できている状態」は違います。
また、企業サイトに掲載する文章は、社内文書や口頭説明とは少し性質が異なります。 初めてサイトを見る人にも伝わるように、前提を補ったり、誤解されにくい表現にしたりする必要があります。
AI生成コンテンツを使って文章作成を補助する方法もありますが、その場合も、内容の正確性や自社の実態とのズレは人が確認する必要があります。
【関連記事:信頼性を損なわせないためのAI生成画像・AI生成コンテンツの活用方法】
画像を用意する作業
もう一つ見落とされやすいのが、画像の準備です。
「デザイン性の高いサイトにしたい」 「ブログやお知らせも見栄えよくしたい」 「施工事例や実績をきれいに見せたい」
こうした要望がある場合、画像の質はとても重要です。
特に、記事ごとにアイキャッチ画像(サムネイル画像)を表示する設計にした場合、更新のたびに画像を用意する必要があります。
そのとき、次のような点を考えておく必要があります。
- 毎回アイキャッチ画像を用意できるか
- 写真を撮影する担当者がいるか
- 画像の明るさやサイズを調整できるか
- 横長・正方形など、必要な比率に合わせられるか
- 著作権上、使用してよい画像か
- スマホで見ても不自然でないか
- サイト全体の雰囲気に合っているか
リニューアル時にどれだけデザインを整えても、更新時に追加する画像の質やサイズがばらばらだと、サイト全体の印象は少しずつ崩れていきます。
たとえば、トップページや記事一覧にアイキャッチ画像が並ぶ設計の場合、画像の明るさ、余白、構図、比率がそろっていないと、全体として雑然とした印象になることがあります。
もちろん、すべての画像をプロ品質にする必要はありません。 しかし、社内で更新するのであれば、最低限の画像ルールは決めておいた方が安心です。
たとえば、
- アイキャッチ画像の推奨サイズ
- 写真の明るさ
- 文字入り画像を使うかどうか
- フリー素材を使う場合のルール
- AI生成画像を使う場合の注記や使いどころ
などです。
また、画像を用意するときは、見た目だけでなく権利面の確認も必要です。 たとえば、画像検索で見つけた写真をそのまま使用したり、ウォーターマークの入った素材画像を掲載したりすると、権利侵害や信用低下につながるおそれがあります。 社内で更新する場合は、使用してよい画像の範囲や、フリー素材・AI生成画像を使うときのルールも決めておくと安心です。
AI生成画像を活用する場合、実際の製品・実績・施設写真と誤認されるような使い方は避ける必要があります。 イメージ画像として使うのか、実際の写真として使うのかは、見る人に分かるようにしておくことが大切です。
【関連記事:信頼性を損なわせないためのAI生成画像・AI生成コンテンツの活用方法】
公開前に確認する作業
WordPressでは、記事を書いて「公開」ボタンを押せば、すぐにWebサイト上に反映されます。 これは便利な一方で、確認不足のまま情報が公開されてしまう可能性もあります。
社内更新では、次のような確認が必要です。
- 誤字脱字がないか
- 日付や金額に間違いがないか
- リンク先が正しいか
- 掲載してよい情報か
- 個人情報や機密情報が含まれていないか
- スマホで見ても読みやすいか
- 古い情報と矛盾していないか
特に、価格、日程、採用条件、キャンペーン内容などは、誤った情報を掲載するとトラブルにつながることがあります。
また、担当者が一人で更新するのか、上司や関係部署の確認を経て公開するのかによって、運用の流れも変わります。
「誰が書くのか」だけでなく、「誰が確認して、誰が公開するのか」まで考えておくと、公開後のミスを減らしやすくなります。
更新ルールを決める作業
WordPressを導入しても、更新ルールが決まっていないと、だんだん運用が止まりやすくなります。
たとえば、次のような状態です。
- 誰が更新担当なのか分からない
- 忙しくて後回しになる
- 画像の用意が面倒で記事を書かなくなる
- 過去のお知らせが古いまま残る
- 担当者が異動・退職して更新方法が分からなくなる
- 何を掲載してよいか判断できず、結局更新されない
社内更新を続けるには、最低限のルールが必要です。
たとえば、
- 月に何回くらい更新するのか
- 誰が原稿を作るのか
- 誰が画像を用意するのか
- 公開前に誰が確認するのか
- 古くなった情報はいつ見直すのか
- 担当者が変わったときにどう引き継ぐのか
といったことです。
細かすぎるルールは負担になりますが、何も決めていない状態では、更新は担当者任せになってしまいます。
「WordPressで更新できるようにする」だけでなく、「更新を続けられる状態にする」ことが大切です。
「デザイン性の高いサイト」と「自由に更新したい」は両立に工夫が必要
Webサイトのリニューアルでは、「デザイン性の高いサイトにしたい」という要望と、「自分たちで自由に更新したい」という要望が同時に出ることがあります。
どちらも大切な要望です。 ただし、この2つは何も考えずに両立できるとは限りません。
デザイン性の高いページは、画像の比率、文字量、余白、見出し、ボタンの配置など、さまざまな要素のバランスで成り立っています。
そのため、更新担当者が自由に画像や文章を追加できるようにすると、次のようなことが起きる場合があります。
- 文字量が増えすぎてレイアウトが崩れる
- 画像の比率が合わず、不自然に切り抜かれる
- 見出しや文字装飾がページごとにばらばらになる
- スマホで見たときに読みにくくなる
- サイト全体の統一感がなくなる
「自由に編集できること」は便利ですが、自由度が高いほど、更新担当者が迷う場面も増えます。
一方で、更新できる範囲をあらかじめ絞っておけば、見た目を保ちながら運用しやすくなります。
たとえば、
- お知らせはタイトル・本文・日付・画像だけ入力する
- 施工事例は写真、概要、工事内容、地域などの項目を決めておく
- 採用情報は募集要項だけ更新できるようにする
- トップページの大きなデザイン変更は制作会社に依頼する
といった形です。
「デザイン性を保つこと」と「誰でも自由に編集できること」は、必ずしも同じ方向を向いているわけではありません。 だからこそ、どこまでを社内で更新し、どこからを制作会社に任せるのかを決めておくことが重要です。
社内更新に向いている内容・制作会社に任せた方がよい内容
WordPressを導入する場合でも、すべてのページを社内で自由に編集できるようにする必要はありません。
社内で更新しやすい内容と、制作会社に任せた方が安定しやすい内容を分けて考えると、運用しやすくなります。
社内更新に向いている内容
社内更新に向いているのは、定期的に情報が増えたり、内容の型がある程度決まっていたりするものです。
たとえば、次のような内容です。
- お知らせ
- ブログ
- イベント情報
- 施工事例・制作事例
- 採用のお知らせ
- よくある質問
- 営業日・休業日のお知らせ
これらは、投稿形式や入力項目を整えておくことで、社内でも更新しやすくなります。
ただし、施工事例や制作事例のように画像が重要なコンテンツでは、写真の準備や選定の負担も考えておく必要があります。
制作会社に任せた方がよいことが多い内容
一方で、次のような内容は、社内で自由に編集するよりも制作会社に相談した方がよい場合があります。
- トップページの大きな構成変更
- メインビジュアルの変更
- デザイン性の高いランディングページ
- 複雑なレイアウトの固定ページ
- バナー作成
- フォームの項目変更
- SEOを意識した大幅なページ改善
- 表示崩れを伴うレイアウト調整
これらは、デザイン、導線、表示確認、SEO、システム面などが関わることがあります。
無理に社内で対応しようとすると、見た目が崩れたり、スマホ表示に問題が出たり、問い合わせ導線に影響したりすることもあります。
社内で更新する範囲と、制作会社に依頼する範囲を分けておくことで、無理のない運用につながります。
サイト全体の保守コストや更新範囲の考え方については、別記事「Webサイト運用の『保守コスト削減』と『更新しやすさ』」でも紹介しています。
【関連記事:Webサイト運用の「保守コスト削減」と「更新しやすさ」】
社内であらかじめ整理しておきたいこと
WordPressで社内更新しやすいサイトにするには、制作を依頼する前に、公開後の運用イメージをある程度整理しておくことが大切です。
最低限、次のような点を考えておくとよいでしょう。
- 社内で更新したい情報は何か
- どのくらいの頻度で更新するのか
- 誰が文章を書くのか
- 誰が画像を用意するのか
- 画像の加工やサイズ調整は社内でできるのか
- 公開前に誰が確認するのか
- 更新担当者が変わったときに引き継げるのか
- どこまでを社内で更新し、どこから制作会社に依頼するのか
- 更新されないまま古くなりそうな情報はないか
ここが曖昧なまま「WordPressにしたい」と依頼すると、公開後に「思ったより更新が大変だった」と感じることがあります。 また、更新作業の負荷が高いほど後回しになり、更新されない・活用されないサイトになることもあります。
反対に、事前に更新内容や担当者を整理しておけば、制作会社側もそれに合わせて管理画面や更新範囲を設計しやすくなります。
制作会社に相談するときに伝えたいこと
制作会社に相談するときは、「WordPressにしたい」と伝えるだけでなく、公開後にどのように更新したいのかも伝えることが大切です。
たとえば、次のように伝えると、運用に合った提案を受けやすくなります。
- お知らせを月1回程度更新したい
- 施工事例を社内で追加したい
- 画像加工は社内では難しい
- 更新担当者はWebに詳しくない
- 公開前に上司の確認が必要
- トップページは自社で触らず、ブログだけ更新できればよい
- 採用情報の募集要項だけ変更できるようにしたい
- アイキャッチ画像を毎回用意するのは難しい
特に、「画像を毎回用意できるか」「文章を書く担当者がいるか」は、運用開始後に負担として出やすい部分です。
デザイン性の高いサイトにしたい場合は、更新時の画像や文字量もサイト全体の印象に影響します。 そのため、更新担当者の作業負担まで含めて相談しておくと、公開後の運用がしやすくなります。
まとめ:WordPress導入より大切なのは、更新を続けられる設計
WordPressは、社内でWebサイトを更新しやすくするための便利な仕組みです。 お知らせやブログ、事例紹介などを社内で更新できれば、情報発信のスピードも上がります。
しかし、WordPressを導入しても、文章や画像を用意する作業、公開前に確認する作業、更新ルールを決める作業は必要です。
特に、デザイン性の高いサイトでは、更新時に追加する画像や文字量によって、サイト全体の印象が変わることがあります。
大切なのは、すべてを社内で自由に編集できるようにすることではありません。 社内で更新する範囲と、制作会社に任せる範囲を分け、無理なく続けられる形にすることです。
「WordPressにするかどうか」だけでなく、公開後に誰が、何を、どのように更新していくのか。 そこまで考えておくことが、長く運用しやすいWebサイトづくりにつながります。

